240205 - 0211

2/5 月
予報の通り午後から雪。東京で生まれ育った自分にとって雪はめずらしく、降ると心のどこかではうれしい気持ちが芽生えてくる。仕事中、雪が気になって何度も窓の外を見た。夕方ごろになると一面が青みがかり、しんとした静けさがあたりを覆っていた。

 

2/6 火
仕事でしょうもないミスをしかけた。誰かに迷惑をかけたわけではないが、自分をひどく責めた。自責思考が強すぎるのはわかっている。どうすればましになるのかわからず、時間だけが経っている。おとといの夜からZINEのことばかり考えていて、自分が思い立ったらすぐ何かしたがる性格であることを強く実感する。

 

2/7 水
突然なんだか食欲が増しているのでルナルナを開いてみると、生理前と呼ばれる期間に入っていた。身体は自分の所有物のはずなのに精神とのあいだに遠すぎる距離を感じる。精神が無理やり身体という容れ物に入っているような感覚がある。
土門蘭『死ぬまで生きる日記』を読み終える。幼少時から「死にたい」と感じてしまう著者がカウンセリングを通して自己と向き合っていく過程を真摯な筆致で綴っている。時おりわたしのことかと思ったところがあった。少しずつ自己理解を深めていく様子を読みながら、自分の心の澱んで固まった部分が少しだけほぐれるような気がした。
残雪の上にアサヒスーパードライの缶が落ちていた。銀色の缶がぎらぎらと光っていて、そのぎらつきはなんだか魚の鱗を思わせた。

 

2/8 木
わたしは不安になるとその不安を打ち消すようにしてとにかく喋りまくるくせがあるらしい。例えばマッチングアプリで一対一で会ったときもひとりでやたら喋ってしまって解散してからだいたい後悔してきたのだが、社外の人とミーティングをするときも同じようなことをしてしまう。もちろん仕事なので制御しているけれど、いつかその制御が効かなくなりそうで怖くなってくる。
前々から変えたかったブログの名前を遂に変更した。昨日読み終えた『死ぬまで生きる日記』のある部分から引用してちょっと変更した。久しぶりに長らくサボっていたストレッチをして、眠った。

 

2/9 金
昨晩ストレッチを念入りにしたからか、寝起きがとてもよかった。しかしなんだか仕事にまったく集中できない一日だった。すぐ気が散る。頭の中でいろんな音楽が鳴り続けている感じ。

好きなグループのドキュメンタリー的な映像が上がった。そこには数分間の歌番組のために点滴を受け、体調不良の中でもステージに上がるメンバーの姿があった。わたしはこの映像をどう捉えればいいのかわからなかった。「点滴を打つほど体調が悪くてもステージに立つ姿勢が素敵!」とか「わたしたちのために頑張っているんだ!と」でも言えばいいのだろうか。たしかに彼の気概は素晴らしいが、本人以外がそのことを美談として扱ったりコンテンツにされている現状に気持ち悪さを感じた。
メンバーの体調不良の原因はわからないがそもそも点滴を打たせるまで練習をさせること、その姿を平然とコンテンツにして世の中に出す事務所は気が狂っていると思った。しかしこの構造には間違いなく自分(ファン)が関わっている。アイドルたちは「ファンに素敵なステージを見せたい」とよく言ってくれるが、そのステージ自体やファンの存在が重圧となり、アイドル自身の心身の健康を損なう原因になっていく可能性について考え込んでしまった。労働者としてのアイドルの姿がキラキラしたものだけではまったくないことはファンたちもなんとなくわかっていると思うし、そのアイドル自身の労働ひいてはアイドルになる以前の過去までも含めて商品化・コンテンツ化され、ファンがまるごとエンターテイメントとして享受している流れを思うとやっぱり生身の人間を推すことは、明らかに自己中心的な消費でしかないのだな……

 

2/10 土
昼前に渋谷へ。電車の中でABBAの"Dancing Queen"を再生したらその場で踊りたくて仕方ない。渋谷でバレンタインのチョコを買ったあと吉祥寺に行って、アップリンクで『夜明けのすべて』を見る。

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自分ではコントロールできないしんどさやつらさや喪失感は確かに存在する。しかしそういった自分だけのしんどさやつらさ、喪失感が存在している事実を他者と分かちあえる瞬間も確かにあって、時にはその事実だけでこれから生きていけるかもなどと思えたりもする、そんなやわらかな希望を淡々と描いていた。この作品が生まれたことに今の自分はすごく救われたような思いがした。今年のベストになりそう。
あと古参マウントを取るわけでは決してないのだが、わたしは旧ジャニーズ事務所のオタクをしていた時期があったので松村北斗さんのことを2015年くらいから知っていて、彼がとてもいい俳優ということは既に別作品で十分に証明されているけど、心底、本当に、心の底から素敵な俳優になったのだなと思った。
夜ごはんは白米、キャベツと玉ねぎの千切りのようなサラダ、スープ。たいした量はないのに千切りサラダで満腹になったと思ったらどんどん膨満感が増していき、気持ち悪くなって薬を飲んだ。胃が疲れているのかもしれない。明日はハンバーガーを食べる予定なので不安になったものの、どうせすべて忘れてたらふく食べるのだろう。

 

2/11 日
24時に寝て、夜中の3時に目が覚めて眠れない。人と遊ぶ予定がある日はいつもこうだ。楽しみだからなのかわからないが、異常に目が早く覚めてしまう。こんなことになった日は、高確率で人といるときにふとした瞬間に寝不足による疲弊の波がやってくるので本当に困る。
吉祥寺で待ち合わせ、胃痛のことをすっかり忘れてハンバーガーを食べ、ドーナツを食べ、チョコクッキーを食べ、パスタを食べる。食べすぎ。

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前に恋人と『燃ゆる女の肖像』の話になり、劇場公開時に見たときは二人が恋愛関係に陥っていくのがあまりにも唐突に思えて本当に理解できなかった、また見たら印象が変わるかも、と話したことを思い出して二人で見返した。ぜんぜん覚えておらず新鮮な思いで見たけれどまったく唐突ではなくむしろ観客に対して目配せをするようにわかりやすい箇所が多かったので、あの時はなぜ理解できなかったんだろう…と当時の自分の理解力のなさにちょっとした戦慄を覚えた。まなざしの交錯によって女たちの物語が美しくも身を切るような切なさで描かれ、一言も好きとか愛してるといったような言葉を発していないのに熱情が静かに炸裂していく様子に見入ってしまった(ちなみに劇場で見た時はたしか眠ってしまっていた)。

今週の一曲/NMIXX "DASH"