240502 東京から台北へ

連日朝の4時に目が覚めてしまう。惰眠を取って8時に起床。いつも旅行に行くときは早朝に起きているので、なんだか行く実感がない。チケットの支払いをして、駅前のカフェで一休み。ターミナル駅で空港行きのバスに。メールを開いたら不正支払いが一部返金されていてラッキー!と思ったが、よく考えたらラッキーでもなんでもなかった。成田に向かっていくバスの中ではなぜかDua Lipaの"Dance The Night"ばかり再生していた。

空港で恋人と合流する。空港はゴールデンウィークの客でうんざりするほど混雑しているかと思ったが、思ったより人がいない。渋谷でも新宿でも吉祥寺でも下北沢でもなく慣れない場所で会うのは不思議な気分。わたしは韓国で買ったSonic YouthのWashing MachineのTシャツを着ていたら彼はThe Strokesだったので笑った。ただバスに乗って移動していただけなのに凄まじく腹が減っている。大量のジャンクフードを食べる。17時前の飛行機で台北に向かう。機内で佐多稲子の『キャラメル工場から』を読み終わると雲の上も日が暮れていた。空の上でプロレタリア文学を読む経験はわたしの人生ではなかなかない。

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目下には紫がかった灰色の雲がもくもくと敷き詰められ、地平線はペールピンクから水色のゆるやかなグラデーションがかっていた。飛行機でこういう夕陽を見るたびになんだか天国みたいだと思う。

入国審査になんだかんだ40分くらいかかって、身動きできるようになったのが一時間半後くらい。台湾は意外と現金しか使えない店が多いので25000円くらい換金する。ホテルが手配してくれたタクシーに乗って市内へ。空港から出た瞬間に湿気が身体をゆるく撫でていった。興奮で自分の声がうわずっていくのを感じる。宿の前で降ろしてもらう。目の前には小さな公園があった。風に揺れる緑の木々を見た瞬間、エドワード・ヤンのみずみずしい緑を思い出した。宿にチェックインする際にスタッフがいろいろ説明してくれたが、わたしはスマホをタクシーに忘れたのではと不安になりそれどころではなかった。結局あったから良かったけど、これまでの自分の旅はあまりにも紛失や忘れ物、書類忘れ、しょうもないミスなどが多すぎたためすぐ不安になる。
タクシーの運転手は人懐っこく親切で、おいしい牛肉麺のお店として富宏牛肉麺を教えてくれたので食べに行く。

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おいしくて移動などの疲れが嘘みたいに生き返る。食べることに必死になりすぎて牛肉麺の写真は撮り忘れた。

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富宏牛肉麺から西門駅のほうへ歩いていく。軒先にいたプードルがわたしの足にすりよってきたので思わずかわいいと声が出た。お店のおばさんがプードルを見ながら「モンモン」と言っていたのでそれがこの子の名前なのだろう。
西門の駅が近くなった。そこここではK-POPがかかり、韓国語がたくさん聞こえる。韓国もゴールデンウィーク的な休暇なのだろうかと思うほどに韓国人観光客がいて、街の喧騒にソウルのホンデを思い出し懐かしくなる。前にも行った天天利食坊でルーロー飯を食べる。

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台湾はサイズを大か小か指定できる店が多く、自分の腹の空き具合に合わせられるのがすごくいい。一年前に台北に行った時、いろいろあってひどく落ち込んでいた。友だちは先の飛行機で行ってしまったのでひとりだった。泣く一歩手前で食べておいしすぎて泣いたのがこの天天利食坊のルーロー飯だった。あの日と同じようにおいしい。台湾の料理はなぐさめてくれるような優しさがあるように思う。
大好きなバーことHanko69に向かったが入り口がふさがっていた。営業停止しているようだった。グーグルマップではずいぶん前から営業停止になっていたので怪しんでいたもののインスタでは営業しているらしかったのでどこか安心していた。台北で好きな店はと訊かれたら真っ先に挙げるくらい好きな店だったのでけっこうダメージを受ける。わたしがめちゃめちゃな中国語で「めっちゃおいしい」と言ったらすごく喜んでくれたスタッフのお姉さんは元気だろうか?

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そのあとはぐるぐるしながらグーグルマップでてきとうに見つけたバーに入った(名前は忘れた)。昔の高円寺や中野にありそうなサブカルめいた雰囲気でタイムスリップしたような気分になった。

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店内には『うる星やつら』のレコードがあり、YMOのライブ盤がずっとかかっている。いま日本に意外とこういう昔ながらのサブカルっぽい店はないんじゃないかとふと思った。最近は無機質系かもっと純喫茶っぽいのが流行っているので、こういったデコラティブな店に入る機会はなかなかないのかもしれない。店を出たら恋人が煙草を吸いたいと言った。普段はわたしの前では吸わないが、海外に来るとそういう気分になるらしい。久しぶりにメンソールの匂いをかいだ。彼が吸うのを見るのは初めてだった。

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「自由生活!!」の落書きが目に入る。いい言葉だなと思う。流れていくように走るたくさんのバイク、湿気た空気、ぎらぎらとした喧騒、普段と違う景色に自分が自由になったような気がする。